2005年07月20日

貴志祐介「黒い家」

ホラーだから仕方がないのかもしれないが、後味の悪い作品だった。
実にサービス精神の旺盛な小説である。
丁寧な伏線の張り方。小道具の使い方。夢のシーンの多様。専門知識の有効利用。クライマックスでのサスペンスの演出など、すべて高い水準をキープしているように思う。
というか日本の新しいエンタテイメントの中では、極めて秀逸な出来栄えと言えるのではないだろうか。
ただ犯人の住む黒い家の床下から白骨死体が多数出てくるという設定には首を傾けざるを得ない。そこまですると話が嘘っぽくなるし、そんなことはなくても充分に恐い話は出来あがっているのである。
バラエティーショー的なサービス精神が、逆に作品を豊かにするより、安っぽくしている気がしてならない。
社会問題ふうの論述が多数あるが、それも大幅にカットするべきだろう。
複数の登場人物に違う意見を述べさせているが、問題をあやふやにさせているだけである。
問題そのものに対する、作者の自己処理の詰めが甘いと批難されてもいたしかたないのではないだろうか。簡単に言うと、薄っぺらなことを喋りすぎているのだ。
傑作と言われるための、シャープネスと品格に欠けるのが惜しまれる。
人間の魂の叫びとかいうものを、もっと深く、濃密に描いてもらいたいと思う。
ともあれ、エンタテイメントとしての必要なエレメントを多数かねそらえた秀作であることには違いない。

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posted by オグ at 06:44| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 広義のミステリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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